生体触媒としての酵素は、化学触媒のように重金属汚染を引き起こさない、また高温、高圧などの条件を必要とせず穏和な条件で高い触媒活性を発揮するなどの多くの優れた特性があります.  本チームは、農林産廃棄物などのソフトバイオマスを分解して糖を生産するのに必要な糖質分解酵素、また飼料添加物として有用なリン酸遊離酵素の生産菌をタイ、ベトナム、ラオス、カンボジアの未開拓のソースよりスクリーニングし、該当する遺伝子の取得とその改変による酵素の高性能化を計り、更に生産経路及びその制御系の解析と人為的操作による高生産菌の開発を行います.
【全期間にわたる研究交流活動及び得られた成果の概要】
本研究においては、強力な植物細胞壁分解酵素の単離と異種発現による大量供給を目的としています. 
タイ側研究者が新規な基質特異性を持つフィターゼのスクリーニング系を確立し、その有用性を確認しました. イノシトールをフィターゼの生産細菌を土壌から単離し、詳細な酵素科学的特性を解明しました. 
【平成25年度 研究交流の成果】
研究交流活動:日本側より1名が7日間モンクット王工科大学トンブリに滞在しました、また他経費でタイ側より1名6ヶ月三重大学に滞在して共同研究に従事しました.
研究活動成果: 飼料穀物中に多量に含まれるフィチン酸より遊離させたリン酸を精製、組み合わせによる触媒能の変化、向上を検討しました. また、分子シャペロンについてより詳細な検討を加え、その機構を解明しました. 農林産廃棄物の有効利用に必須な細胞壁多糖分解酵素、その生産菌について、酵素群の更なる精製、アミノ酸部分配列の決定、該当遺伝子の取得を経て大量発現系の構築と詳細な酵素学的解析を行いました.
タイやベトナムでは、農林畜産分野にとって有用なリン酸遊離酵素や植物細胞壁分解酵素に関して、新規酵素を探索・取得し解析する知識と経験を備えた人材が育成されました. 同時に、大量発現と酵素精製に関する知識と技術が普及しました。
【平成25年度 研究交流の計画】
 飼料添加物として有用なリン遊離酵素及びその生産菌、難分解性多糖分解酵素とその生産菌を対象として、大腸菌高発現システムを援用した組換え酵素の大量発現系の構築と該当酵素の精製、組み合わせによる触媒能の変化、向上を検討する。又、リン遊離酵素と結合して、その触媒能を上昇させる分子シャペロンについてより詳細な検討を加え、その機構を解明し、実地への応用を検討します.
また、ソフトバイオマスである農林産廃棄物の有効利用については、植物細胞壁分解酵素が必須です.その生産菌については、セルロソーム様多酵素複合体を形成する酵素群の更なる精製、アミノ酸部分配列の決定、該当遺伝子の取得を経て各コンポーネントの大量発現系の構築と酵素学的解析、その改変による生産性の向上や酵素の高機能化を行います.
【平成24年度 研究交流の成果】
研究活動:  日本人研究者1名が6日間タイに、タイ人若手研究者3名が242日間日本に滞在し研究活動を実施しました.

研究活動成果:  極めてユニークな多糖分解酵素複合体を形成する主要な5つの酵素群の精製を完了し、アミノ酸部分配列の決定、該当遺伝子の取得を経て大量発現系の構築と詳細な酵素学的解析に成功しています.  さらに、工業プロセス上、生産菌をいかにスクリーニングし、酵素を単離し、遺伝子を取得後、大量発現を経て応用展開に必要な生化学的解析をおこなうかの方法論を備えた人材がタイに定着できました。 なお、触媒能を著しく増強するタンパク質の取得に成功しており、農林畜産分野への応用展開の途が拓けました。  
【平成24年度 研究交流の計画】
飼料添加物として有用なリン遊離酵素およびその生産菌、難分解性多糖分解酵素とその生産菌のスクリーニングを継続します. 手法は、前年度までに確立したフィチン酸資化性スクリーニング法、並びに多糖分解検出プレート法を用います. また前年度までに取得した新規な基質特異性を持つフィターゼについては、該当遺伝子が取得できているため、大腸菌高発現システムを援用して組換え酵素の大量発現系を構築し、精製後酵素学的な検討を行い、実地応用への検討を開始します. ソフトバイオマスの有効利用に必要な植物細胞壁分解酵素生産菌については、セルロソーム様多酵素複合体を形成する酵素群の精製、アミノ酸部分配列の決定、該当遺伝子の取得を経て大量発現系の構築と酵素学的解析、その改変による生産性の向上や酵素の高機能化を行います.
【平成23年度 研究交流の成果】
研究活動: 日本人研究者2名がタイへ延べ16日間、タイ側研究者1名が10日間日本に共同研究のため滞在しました.

研究活動成果:  前年度までに確立したスクリーニング手法により、リン遊離酵素生産菌のスクリーニングを継続して実施しました. 取得した新規フィターゼ生産菌については、本新規フィターゼの精製を終了し、詳細な酵素学的諸性質の検討を行いました. さらに、該当する酵素遺伝子を取得・解析後、大腸菌を用いて酵素の大量発現系を構築しました. 
タイ産嫌気性菌が生産するソフトバイオマスの有効利用に必要な植物細胞壁分解酵素群については、主体をなす6種のキシラナーゼの精製後、該当遺伝子の取得を経て大量発現系の構築と酵素学的解析に成功しました.
酵素生産菌のスクリーニングは、新規な活性を持つ酵素の生産菌をいかに集積し、効率良くスクリーニングするかという点に工夫が必要とされます。共同研究を通じて新規酵素探索法の構築に関して、知識と技術を備えた人材が増え、定着しました。また通常、野生株の状態では、酵素生産量は微量で、そのままではそれ以上の解析は不可能で、遺伝子取得や組換え型酵素の異種大量発現が必須となり、これらの手法に習熟した人材が育成されました。
【平成23年度 研究交流の計画】
鶏腸内に生息する難培養微生物DNAライブラリー、並びにこれまでに分離した微生物を用いて、飼料添加物として有用なリン遊離酵素およびその生産菌をスクリーニングします.手法としては、前年度までに確立したフィチン酸資化性スクリーニング法を用います.前年度までに取得した新規フィターゼ生産菌については、酵素の精製、アミノ酸部分配列の決定を経て、該当遺伝子の取得と解析を行い、更に大腸菌高発現システムを援用して組換え酵素の大量発現系を構築し、精製後酵素学的な検討を行います.ソフトバイオマスの有効利用に必要な植物細胞壁分解酵素生産菌については、同様に酵素の精製、アミノ酸部分配列の決定、該当遺伝子の取得を経て大量発現系の構築と酵素学的解析、その改変による生産性の向上や酵素の高機能化を検討します.
【平成22年度 研究交流の成果】
研究交流活動: 日本側研究者1名が8日タイに滞在し、タイ側研究者1名が10日日本に滞在しました.  植物に由来するソフトバイオマスの分解に必要なセルラーゼなどの糖質分解酵素生産菌と該当酵素の単離、解析に関する共同研究、並びにフィターゼなどの飼料添加物として有用な酵素の生産菌と該当酵素の単離、解析に関する共同研究を行いました.

研究活動成果:  通性嫌気性細菌が強力なヘミセルロース分解力を持つ酵素複合体を生産することを見いだし、該当遺伝子の単離と大腸菌で発現させた組換え酵素の生産、機能解析に成功しました.新規有用酵素の生産においては、土壌や鶏腸内よりのメタゲノムライブラリーが完成し、新規フィターゼスクリーニング法の完成と合わせて、新規酵素生産菌を得ることに成功しました.また、フィターゼの精製、解析と該当遺伝子の取得に成功しました.
【平成22年度 研究交流の計画】
タイの未開拓ソースより、前年度確立したスクリーニング手法を用いて、飼料添加物として有用なフィターゼなどのリン酸基遊離酵素生産菌のスクリーニングを継続して実施します.前年度取得した新規フィターゼ生産菌については、菌の分類学的位置を含む諸性状と生産酵素の諸性質を決定し、高力価をもたらす手法を検討します.ソフトバイオマスの有効利用に必要な植物細胞壁分解酵素生産菌は、該当遺伝子の取得とその改変による酵素の高機能化、生産系の解析と人為的操作による高生産菌の開発などを検討します.
有用酵素生産菌の分離培養法とその評価法、高力価酵素の生産菌育種に関する知見が集積されます.
【平成21年度研究交流の成果】
飼料添加物として有用なリン遊離酵素の生産菌をタイの未開拓ソースよりスクリーニングし、新規フィターゼ生産菌を取得しました.またソフトバイオマスの有効利用に必要な植物細胞壁分解酵素生産菌より酵素を精製単離し、該当遺伝子の取得後、組換え型酵素を用いて詳細な性質を決定しました.
【平成21年度研究交流の目標】
ソフトバイオマスの分解に必要なセルラーゼなどの等質分解酵素、並びにフィターゼなどのリン遊離酵素の生産菌をタイ、ベトナムの未開拓のソースよりスクリーニングし、該当遺伝子の取得とその改変による酵素の高機能化、青酸系の解析と人為的操作による高生産菌の開発を行います. 有用酵素菌の分離培養法とその評価法が確立できます.
日本側メンバー (2013年12月現在)
粟冠和郎(三重大学生物資源学研究科資源循環学)
木村哲哉(三重大学生物資源学研究科資源循環学)
粟冠真紀子(三重大学生物資源学研究科資源循環学)
浅野行蔵(北海道大学農学研究科応用生命科学)
曾根輝雄(北海道大学農学研究科応用生命科学)
田中 みち子(北海道大学農学研究科応用生命科学)9月迄
タイ側メンバー
Prof.Dr.Vithaya Meevootisom(マヒドン大学)
Dr.Suthep Wiyakrutta(マヒドン大学)
Dr.Khanok Ratanakhanokchai(キンモンクット工科大学)
Dr.Chakrit Tachaapaikoon (キンモンクット工科大学)
ベトナム側 : Institute of Microbiology and Biotechnology(IMBT), Vietnam National University Hanoi
Dr. Douong Van Hop
Dr. Chu thi Thanh Binh
Msc. LE, Thi Hoang Yen
Msc. Hoang Van Vinh

T.N 17.March 2014