大阪大学生物工学国際交流センター 藤山研究室  
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研究概要

新しいタンパク質生産システムの開発を目指し、植物や昆虫を“タンパク質工場”として捉えて研究を進めています。 また、動物細胞やPichia酵母も利用した組換えタンパク質生産技術の開発・改良を行っています。

組換え医療用タンパク質の多くは、翻訳後修飾(例えば糖鎖修飾)を受けており、糖タンパク質の糖鎖部分は、生物学的活性やタンパク質の安定などに重要な機能を持ちます。しかし、糖鎖修飾は組換え宿主の能力に依存し、ヒトのものとは異なる場合があります。そこで、私たちは用いる宿主の糖鎖修飾機能を理解するため基礎的研究を行い、ヒト適応化のテクノロジーを開発しています。

*PubMedに記載されている参考文献にについてはPubMedIDにリンクしています。

植物糖鎖エンジニアリング

1.種々の植物が持つ糖鎖付加機能のポテンシャルを調査している。

タバコBY2培養細胞やアラビドプシスMM2d 培養細胞 の細胞内糖タンパク質や細胞外に分泌された糖タンパク質の糖鎖構造を解析し、糖鎖付加機能のポテンシャルを評価している。タバコBY2培養細胞の細胞内外に存在する糖タンパク質の糖鎖構造を比較すると、細胞外質タンパク質の糖鎖には、b1,2-Xyl残基を持つものが多かった。

 

参考文献

Fujiyama et al. Plant Biotechnology, 24, 255-259 (2007)

Misaki et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 65, 2482-2488 (2001)

Palacpac et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., 63, 35-39 (1999)


2.これまで植物で生産した組換え医療用タンパク質についてその糖鎖構造を 解析し、組換えタンパク質生産における植物糖鎖付加機能のポテンシャル を調査している。

これまでに、下記の植物生産外来タンパク質の糖鎖構造を解析した。

植物に特有なa1,3-Fucやb1,2-Xyl残基を持つ植物型糖鎖Man3FucXylGlcNAc2を主として保時していることが判明した。

解析した植物生産外来タンパク質
  ・ラクトフェリン(組換えイネ) <共同研究;茨城大、Venturia社(CA, USA)>
  ・ハウスダストアレルギー性タンパク質(組換えイネ) <共同研究;生物資源研>
  ・HIV膜タンパク質由来ペプチド-コレラトキシンキメラタンパク質(組換えトマト)
    <共同研究;Arizona State Univ (AZ, USA)>

 

 

参考文献

Matoba et al. Plant Biotechnol J. 7. 129-145 (2009)

Yang et al. Biochem. Biophys. Res. Commun., 365, 334-339 (2007)

Nandi et al. Transgenic Research 14, 237-249 (2005)

Fujiyama et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., 68, 2565-2570 (2004)


3.糖鎖修飾機構のエンジニアリングの戦略として、以下の3つを提唱している。

1)植物に存在しない哺乳類由来糖鎖修飾遺伝子を導入する

参考文献

・ガラクトース

Fujiyama et al. Biochem. Biophys. Res. Commun, 358(1), 85-91 (2007)

Misaki et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., 65, 2482-2488 (2001)

Palacpac et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 4692-4697 (1999)

・シアル酸

Misaki et al. Biochem. Biophys. Res. Commun, 339, 1184-1189 (2006)

2)植物の糖鎖修飾遺伝子の変異体を用いる

参考文献

3)植物細胞内局在化を変える

参考文献

Fujiyama et al. J. Biosci. Bioeng. 107, 165-172 (2009)

Fujiyama et al. J. Biosci. Bioeng., 101, 212-218 (2006)

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植物による医療タンパク質生産

植物による医療タンパク質生産は、動物ウィルスの混入の心配がなく、タンパク質の翻訳後修飾が可能なため、今後の発展が期待されている生産システムである。欧米では、実用化を目指して研究されている。2009年12月、Pfizer社は、Protalix社(イスラエル)が開発したGaucher病治療酵素ヒトglucocerebrosidaseの組換えニンジン培養細胞による生産について提携することになった。

このように、植物を用いた生産システムは実用化に近づいている。

私たちは、これまでに下記のように、ワクチンや抗体タンパク質の生産に取組んできた。

 

総説;

「植物バイオリアクターによる外来タンパク質生産 -特集によせて-」 生物工学会誌 第83号 第11号 509 (2006)

「植物生産医療タンパク質と糖鎖」 生物工学会誌 第83号 第11号 522-524 (2006)

 

EMBO Rep. 6, 593-599 (2005)

1.ワクチン生産

ワクチン生産にはタバコモザイクウィルス(TMV)を発現ベクターとして用いた。ポリオウィルスタンパク質のペプチドを、TMVのコートタンパク質に融合した形で生産し、マウスでの抗体誘導性を調査した。また、私達が共同研究している東南アジアではデング熱ウィルスが大きな問題となっている。そこで、植物を用いてワクチン生産を試みた。TMVウィルスゲノム遺伝子を改変し、デング熱ウィルス2型の表面タンパク質を生産した。精製した組換えタンパク質をマウスに投与し、中和抗体誘導性を調査した。

 

参考文献

・デング熱ウィルス

Saejung et al. Vaccine, 25 (36), 6646-6654 (2007)

 

・ポリオウィルス

Fujiyama et al. J. Biosci. Bioeng., 101, 398-402 (2006)

2.抗体生産

マウスモノクローナル抗体のH鎖とL鎖をコードするcDNAをタバコBY2培養細胞に導入し、タバコ培養細胞で抗体を生産した。この抗体の糖鎖構造を解析した。さらに、培養細胞外に抗体が分泌されていることを確認した。

 

参考文献

Fujiyama et al. J. Biosci. Bioeng., 101, 212-218 (2006)

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植物糖鎖分子細胞生物学

1.糖鎖修飾酵素の分子細胞生物学

Arabidopsis thaliana のchromosome IIIに存在するa-mannosidase遺伝子を単離した。このa-mannosidaseは、液胞に存在すると考えられている。

N-結合型糖鎖付加経路に関わるGolgi a1,2-mannosidase遺伝子2種を単離し、それぞれの機能と植物体における発現様式などを明らかにした。さらに、N-acetylglucosaminyltrans-ferase I (GnT-I)遺伝子をタバコより取得し、大腸菌で生産した組換え酵素の諸性質を調査した。

植物の細胞壁に存在する3-deoxy-D-manno-octulosonate (KDO)の生合成の一部である酵素CMP-KDO合成酵素遺伝子をA. thaliana より単離し、酵素学的性質を調査した。

 

参考文献

Kajiura et al. Glycobiology, 20, 235-47 (2010)

Dohi et al. J. Biosci. Bioeng., 109 (4), 388-391 (2010)

Misaki et al. J. Biosci. Bioeng., 107, 165-72 (2009)

Fujiyama et al. J. Biosci. Bioeng., 92, 401-404 (2001)

2.植物における糖鎖機能生物学

参考文献

Kang et al. Proc Natl Acad Sci USA. 105, 5933-5938 (2008)

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カイコ糖鎖分子細胞生物学

1.カイコにおける糖鎖修飾

参考文献

Misaki et al. Biochem. Biophys. Res. Commun., 311, 979-986 (2003)

2.カイコにおける糖鎖修飾関連酵素遺伝子

参考文献

・b-N-acetylglucosaminidases

Okada et al. Biosci. Biotechnol. Biochem. 71, 1626-1635 (2007)

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糖鎖修飾酵素遺伝子の微生物を用いた生産

参考文献

・ヒト由来N-acetylglucosaminyltransferase I 使用宿主; E. coli

Fujiyama et al. J. Biosci. Bioeng., 92, 569-574 (2001)

 

・ヒト由来Man9-mannosidase 使用宿主; E. coli

Fujiyama et al. J. Biosci. Bioeng., 91, 419-421 (2001)

Moran et al. J. Ferment. Bioeng., 86, 277-283 (1998)

 

・ヒト由来b1,4-galactosyltransferase 使用宿主; E. coli

Shibatani et al. J. Biosci. Bioeng., 91, 85-87 (2001)

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動物培養細胞を利用した医療用タンパク質の効率的生産系の構築

1.動物培養細胞を利用した医療用タンパク質の効率的生産系の構築

抗体をはじめとする有用医療用タンパク質遺伝子をクローニングし、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)など動物培養細胞での効率的発現と生産を目指す。また現在、ヒトへの適用を見据えて、宿主動物細胞の翻訳後修飾機構を制御する技術を開発している。

 

2.動物培養細胞を利用した組換え糖タンパク質輸送評価系の構築

動物細胞(特に免疫細胞)では、細胞表面の糖レセプターを介して糖タンパク質を細胞内へと取り込む機能がある。この機能を利用し、植物で生産した組換え糖タンパク質を効率よく動物細胞内に取り込ませる系を構築する。各種糖鎖構造を合成できる変異植物で生産させた糖タンパク質を精製し、動物培養細胞に取り込まれる効率を評価する。

 

参考文献

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分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)を用いた
糖鎖リモデリング技術の開発

1.糖鎖修飾酵素の分子細胞生物学

酵母は真核単細胞微生物であり、異種タンパク質生産宿主として工業的にも広く用いられている。その中でも我々は以下のような特徴を有する分裂酵母に着目し、異種タンパク質生産システムの開発を行っている。

1. 安価な培地で生育速度が速く、高密度培養が可能(出芽酵母やPichia酵母等と共通)

2. 多様な遺伝子工学的手法が利用可能(出芽酵母やPichia酵母等と共通)

3. 高等真核生物と類似した転写翻訳機構を有し、出芽酵母やPichia酵母等に比べてより高等真核生物遺伝子の相補性を示す。

4. 糖鎖修飾などの翻訳後修飾が起こる(出芽酵母やPichia酵母と異なりガラクトース含有糖鎖生合成系を有する)

しかし、生産させた糖タンパク質には酵母特有の過剰糖鎖の伸長が起こるため(図1)、医療用糖タンパク質の場合、ヒト体内での抗原性及び血中での半減期の減少が大きな問題となっている。そのため、私たちは酵母型糖鎖のヒト型糖鎖への糖鎖リモデリング技術の開発を行っている(図2)。

FIG_1 FIG_2

図1 分裂酵母野生株の糖タンパク質糖鎖

図2 分裂酵母型糖鎖からヒト型複合型 糖鎖改変へのストラテジー

 

参考文献

Ohashi et al. Glycobiology. 21, 340-51 (2011)

Ohashi et al. J Biotechnol. 150, 348-56 (2010)

Ohashi and Takegawa. Appl Microbiol Biotechnol. 86, 263-72 (2010)

Ohashi et al. Biosci Biotechnol Biochem. 73, 407-14 (2009)

Takegawa et al. Biotechnol Appl Biochem. 53, 227-35 (2009)

Ikeda et al. FEMS Yeast Res. 9, 115-25 (2009)

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